鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
 うちの会社は世界中に展開していることもあり、近年のCMに海外で活躍する日本人を起用している。短編をテレビで放映し、フルインタビューを会社のホームページにアップしていた。スポーツ選手やモデル、アニメーターなど職種はさまざまだ。

「で、次に本城誠司さんを起用したいって話になっていて」
「え、誠司さんって」
「そう、社長のお兄様の」
「普通にコンタクトとればいいんじゃない? 多忙ではあるだろうけれど……」

 なにしろあの明るい性格だ。特にメディア露出を控えているわけではなさそうだし、タイミングさえ合えば快諾してくれそうだ。

「それがさあ、断られちゃって」
「ええっ、なんで」
「それがわからないの」
「玲司さんは……」
「まだそこまで話、上がってないと思う。今度の定例会で上げたいみたいで、それまでに誠司さんとどうにか接触しろって突き上げくらっちゃって」

 同期の子は上目遣いで「おねがーい」と眉を下げた。

「お義兄さんでしょ? どうにか話だけでも聞いてくれるように、頼んでくれないかな? あ、もちろん社長には内緒でっ」
「うーん……」
「お願い」

 そういう彼女の視線には必死な感情がこもっていた。
 私は肩をすくめる。

「まあ、連絡を取るくらいは……できなくもないと思うけれど」
「ありがとっ」

 彼女は顔を上げ、心底ほっとした顔をした。多分板挟みで大変だったんだろう。
 帰宅して、以前いただいたストールと一緒に入っていたブランドの名刺を取り出す。裏面に電話番号がかかれている――多分、これは個人的な連絡先なのだろう。
 私はため息をついて、その番号をタップした。




 なんと誠司さんは都内にいた。新しく直営店を銀座にオープンするらしく、その準備に帰国していたらしい。

「ご連絡いただければ、ご挨拶に伺いましたのに」

 オープンするという銀座の店舗。まだ内装工事をしているその店内で、私は誠司さんと会っていた。誠司さんはときおりスタッフさんに指示を出しつつ、小さく苦笑を浮かべた。

「いやあ、なかなか忙しくて」
「CMの件も厳しいですか?」
「うーん……」
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