鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
「都庁のちかくでフリー参加のバスケしてるらしいんですよ」
「へえ?」
「どうですか」

 玲司さんは何度か私の手を握り直したあと、頬を緩めた。

「そうか。じゃあ、久しぶりに身体を動かすか」
「すっごい応援しますから」
「はは。肉離れが不安だな……」

 そう言う玲司さんは、ちょっとうきうきしているような気がした。





「そんなわけで、玲司さんきゃあきゃあ言われちゃって大変だったんですよ」

 街がクリスマス一色になった師走の半ば、浦田さんに先日玲司さんとフリー参加バスケに行ったときのことを話す。
 遅い時間帯だったこともあってか、ライトに照らされたコートにいたのは社会人の人がほとんどだった。

「もうね、玲司さんがボール持つと絶対取られないんです!かっこよかったあ……!」
「へーふーんよかったわねえ」
「なんですかそのどうでもよさそうな相槌……」

 ランチタイムの、いつものカフェだ。
 乃愛ちゃんからときどきランチに誘われることもあったけれど、断るようになっていた。
 あれから会社にはネックレスをしてきていないけれど、またちくちく言葉浴びせられるの嫌だし。

「ちょっと寝不足でね」
「わ、忙しいですか」

 年末だしな、と頷くと微妙な反応をされた。

「年末だからというより色々とね。まあやりたいからやってるんだけど」
「そういえば、藤木さんトップに咲き戻りましたね」
「ま、ね……新原さんみたいな方法がいつまでも通用するわけじゃないしさ」
「あ、あの。まだ確定ではないんですよね?」
「ん、まー……ね」

 含みのある感じで言われて、私は少し不安になってしまう。
 乃愛ちゃんは確かに少しきつくてちくちく言葉もすごいけど、そこまで悪い人だって思いたくなくて。
 だって同級生だ。

 会社に戻ると、なんと社長室から乃愛ちゃんが出てくるところに遭遇した。
 びっくりして固まってしまう。まさか、なにか、決定的なことが起きたんじゃ。
 懲戒処分になっただとか、そんなこと。

 でもそういうわけじゃなさそうだった。

 乃愛ちゃんはなぜか私の目の前までヒールの音も高らかにやってきて、私を見下ろしてなんだか歪に笑ったのだった。
 大きく笑いだしたいのを我慢しているかのような。
 そしてそのままエレベーターホールのほうに歩き去ってしまう。

「……?」
「心春」
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