鉄仮面CEOの溺愛は待ったなし!~“妻業”始めたはずが、旦那様が甘やかし過剰です~
「そんなこと言わないでください」

 私は大きく笑う。

「夫婦じゃないですか」
「……心春」
「なんでも巻き込んでください。私、そんなに弱くないです。強くもないけど」
「そんなことはない」

 玲司さんは私の頬を撫でた。

「君は強い」
「そんなことないです。さっきもう、乃愛ちゃん目の前にして泣いてぐらぐら揺れて」

 竹林みたいに、と少し冗談めかすと玲司さんは真剣に言う。

「君みたいに強い人をしなやかだと言うんだ」

 そうして私の頬を撫でた。

「高校時代、新原のことを言わなかったのは」
「わざとじゃないと思ったんです」
「……たったそれだけの理由で十年も口を噤んでいられる君の、どこに弱さがあるというんだ。新原については残念な結果となったけれど、君しなやかな強さに救われている人間は、守られている人間は きっとたくさんいる」
「そうでしょうか」

 そうだ、と玲司さんは強く言う。

「俺だってそうだ」
「……玲司さんも?」
「俺は君を守りたい。でも同時に君に支えられいつだって守られている。自信を持ってほしい」

 私は息を吸い、そして胸を張る。
 そうして自信満々に微笑んだ。

 だってそんなふうに言われることは、私にとって最高の誉れなのだから。

 玲司さんへの感情が憧れから愛情に変わっても、根本は変わらない。
 尊敬する彼のそばにいることが、私にとって一番の幸福なのだ。
 冬の無人の小さな公園のベンチで、くっついて寄り添う。
 そばにいると、ほんのり温かい。
 たったそれだけで幸福を感じる。そう思える人に会えたことを、心から感謝したい。






 玲司さんの誕生日はあっという間にやってきた。

「プレゼントって、決まったの?」

 ランチで浦田さんに聞かれて、曖昧に笑う。決めたのは決めたけれど、どうだろう。

「喜んでもらえるか、どうかなあって……その、恋愛経験がないもので、思いついたのがそれしかなくて」
「あ、そう? なんだかわかんないけど、玲司くん、心春ちゃんからならなんでも喜びそう。特にいまてんやわんやしてるし、喜びもひとしおなんじゃない?」

 乃愛ちゃんの件は、つい一昨日に公表された。
 彼女が枕営業を仕掛けていた先に公的な研究機関があったため、世間の対応はかなり冷ややかなものとなった。
 ただ、包み隠さず調査し公表した玲司さんの対応には、おおむね好感を持たれている雰囲気ではあった。
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