無自覚な大人気モデルは、私だけに本気の愛を囁く
「おー、匠じゃん」
「和也、相変わらず暇?」
「うるせ。……あれ? 女の子⁉︎」
黒髪をオールバックにして、白シャツに黒のベストを着ている和也が、咲子の存在に驚愕していた。
その後慌てて「いらっしゃいませ」と口にするも、気になって仕方ない様子。
それを察して、匠が咲子を紹介する。
「こちら、長戸咲子さん」
「こ、こんばんは。雪島さんとは仕事でお世話に――」
「おいおいマジかよ匠ー! やっと俺に彼女紹介してくれたな!」
咲子の話を最後まで聞かずに、興奮気味の和也がカウンターから出てきて匠の背中を叩く。
その友人のノリを目の当たりにした咲子だが、咄嗟に訂正した。
「ち、違います! 彼女ではないです!」
「え? そうなの?」
和也はきょとんとした顔で匠を見たが、いつもの無表情がそこにあった。
そして何も説明することなく、カウンター席に座るよう咲子に声をかける。
「和也とは小中高と同級生なんだ」
「そうだったんですね」
「で、いつも店に“彼女連れてこい”ってうるさいやつ」
苦言を述べた匠は、本当に困っている様子でカウンターに頬杖をついている。
一方の和也はカウンター内に戻り、匠がいつも注文するウイスキーを準備しながら咲子に飲み物を尋ねた。
咲子は遠慮しながらも、唯一飲み慣れているミモザを注文。
すると、和也がニコリと笑って応え、テキパキと準備をしながら先ほどの会話の続きをはじめた。