無自覚な大人気モデルは、私だけに本気の愛を囁く



「……私のことは、もう好きではなくなったかもしれないと、不安なのは確かです」


 この一年間、ずっと心に抱えていた気持ちを、咲子は正直に伝えて唇を噛み締めた。
 顔も合わせず、声も聞けずに過ごした一年。
 その我慢と不安は、咲子にとってはますます匠への想いを募らせる結果になっていた。
 会えないほどに、会いたくなる。
 そして初めて、咲子は匠を好きになってしまったと自覚した。
 だから連絡をもらって嬉しかったし、すぐに駆けつけることができた。
 匠に会いたい一心で――。
 すると、匠は軽く笑い声を漏らして咲子に視線を送る。


「好きじゃなくなっていたら、連絡しないだろ」
「え……」
「今日は、あの時に交わした約束を守るために咲子を呼んだんだよ」


 プロのフォトグラファーになる夢を叶えた咲子。
 それを讃えるように、匠はそっとその頬に手を添えた。
 そして――。


「咲子、俺を撮ってよ」
「匠さん……」
「今度、正式に社長になる。だから、そのプロフィール写真が必要なんだ」


 それを咲子に撮ってもらうために、匠は意を決して連絡した。
 しかし仕事の依頼とかこつけて、本当は咲子に会いたかった匠が徐々に顔を近づけてくる。


「俺は毎日、咲子のことを想っていた。咲子は?」
「……わ、私も……。匠さんに会いたかった……」


 咲子の精一杯の言葉を、一年待った告白の返事と捉えた匠の心臓は、今までにないほどに加速していた。
 そして鼻先同士をつんと触れさせて、咲子の反応を確かめる。
 すると、咲子は静かに瞼を閉じてそれを待った。


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