神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
(期間限定とはいえ、花嫁だの恋仲だのと私にやらせるなら、なんかこう、事前に知らせといてよ)

いや、瞳子の性質上、事前に知らされていたら、花嫁も恋仲も断っていた可能性は大だが。

(おまけに、女子からのあの囲まれよう……鼻の下のばしてんじゃないわよ、奥さん泣くわ)

客観的視点からいえば、そんな事実はない。瞳子のなかにいまだ根強く残る『男』という生き物への偏見だ。

(あ、一応、離縁したって言ってたから元妻さんなのか)

そして気になったのが。

(まさかとは思うけど、お願いしたいって、ソッチの話ではないわよね?)

最初は単純に、この辺りの為政者の息子が帰って来たため若い娘らが歓迎している、という図かと思ったが。

(あの、お腹の大きかった娘さん……)

彼女のお腹の子は、もしや、と。
瞳子は、その可能性を考えただけで、なんともいえない気分になった。

これが、昨日までの瞳子であれば、
「あっちこっちの女に手をだしてるなんて、サイテー!」
と、(はな)からセキを疑い、軽べつしたことだろう。

しかしいまは、セキがそんな風に女性と関わっているとは、到底思えなくなってしまったのも事実だ。
< 116 / 399 >

この作品をシェア

pagetop