神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
(別に……“神獣”に戻れなくても、私はアンタのこと)

続く想いの先を思考しないよう、瞳子は自分の心をごまかした。

(だって私は……帰るんだから、元の世界に)

言って、どうなることではない。
いや、こんな中途半端な気持ちで伝えるべき言葉など、ないのだ。

その後、セキは瞳子に対し、今夜 家の者を集めて自分が“神獣”であることを明かし、家督を弟である虎次郎───尊仁に継がせるという話をすると、説明をくれた。

また、その内容が、瞳子に話したものと一部違うことや伏せることも了承してほしいとも言われた。

瞳子は途中から、セキへの想いの自覚に気を取られ、彼の話も半分うわの空となっていたが。

「それと。最後に一番重要で、瞳子にも協力してもらいたいのが、俺の……『虎太郎』の母との対面だ。

彼女は病気療養中で、この敷地内にはいない。だからそこへ、明日、俺と一緒に行ってもらうことになる。
俺の───恋仲として」

ぼんやりとした頭には、十分すぎるほどの爆弾投下、だった。




< 146 / 374 >

この作品をシェア

pagetop