神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
凛々(りり)しい眉と通った鼻筋。一般的にみれば男らしい顔立ちの美丈夫だ。

「刻限に、遅れたつもりはないが。……ハク殿たちは、どちらに?」

セキらしくない冷たい物言いからは、目の前の男に対する敵意が感じられた。瞳子は、思わず半身をセキの後ろに隠す。

()うに、本殿の広間へと向かわれたよ。
おや、そちらが(くだん)の天女様だね?」

言って、ひょいと瞳子のほうへと身を乗りだしかけた男を、セキの片手がぐいと押しやった。

「まずは、我らも本殿へと案内してもらおうか?」
「うん? 先にこちらの姫君にご挨拶じゃないのかい?
初めまして、天女様。私はこの“上総ノ国”の“国司”、穂高(ほだか) 輝玄(てるつね)と申す者。
……いやはや、想像以上に麗しい容貌(かんばせ)であらせられる。これでは二柱の“神獣”サマ方が取り合いになっておられるのも、至極当然なこと。
どうだろう? この私も参戦させてもらうというのは?」

セキのにらみを物ともせず、瞳子を見ながら機関銃のごとくしゃべり倒す男の歳の頃は、四十代前半かと思われる。
───が。

(キモ! 私、イケオジとか興味ないから!)

左の目もとにあるホクロのせいか、瞳子を見て細められた視線が、いやらしく見える。
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