神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
「で? そのハツカネズミさんが私に何の用?」
「お困りのようでチたので、お(たちゅ)けチて(しゃ)チ上げようかと思ったッチュよ」

エヘン、と。
瞳子の投げやりな問いにめげることもなく、白い毛に被われた胸を張るネズミ。

「……どうぞ、お構いなく」

片頬を引きつらせながら言い、足元にいるネズミを踏まぬように歩き出す。

「あーッ、待ちゅッチュよ! (はなチ)(しゃい)後まで聞くッチュ!」

カリ、と、またしても引っかかれる足首。

瞳子は、思うようにならない自身の現状も重なり、その小さな生き物にいらだちをぶつけた。

「っ……だから何ッ!?」
「───……ホンッとに、恐いおなごでチュね〜。ココから出たいのではないのれチュか?」
「……ここ?」
「ちょうれチュよ〜。こんな“結界(けっかい)”のなかをグルグル歩かしゃれて、お(ちゅか)れなのでは?」

小さな指先で円を描いてみせ小首を傾げる様に、不覚にも可愛らしさを感じてしまう。

(くっ……なんだかバカみたいな話だけど)

言語を操れるネズミ。
何か、特別な力でも持っているのかもしれない。

「……頼んだら、アンタが私を助けてくれるワケ?」
「もちろんッチュよ!」
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