神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
「こちらの考えで『蝶の羽ばたき効果』というものがございましてね」
わざとらしい大きな溜息のあと、玻璃越しのひとえ瞼の眼が、セキを冷ややかに射貫く。
「例えどれほどささないな出来事であっても、その影響は計り知れない、というものなのですが。
貴方と瞳子様がこちらで出逢った……いえ、瞳子様が貴方を偶然見かけた……でも構いません。そのことによって、瞳子様が【以前はしたことを今度はしない】可能性が出てくる訳です。
貴方とどのように“陽ノ元”で出逢ったかは知りませんが、同じ時間と場所で出逢わなくなる可能性もあるのです」
「それは……」
反論するでなく、思わず口をはさみかけたセキを、一葉は容赦なくさえぎった。
「ええ。別に、違う出逢い方でも、貴方がたが惹かれ合う可能性はゼロ……皆無ではないでしょう。
ですが」
じっ……とセキを見つめ、一葉が冷笑を浮かべる。
「すると、その後の諸々の出来事も変わるはず。いま貴方は【ここに】居ますが……居なくなる可能性も、ある」
「……俺と瞳子の『気持ち』は変わらなくても、出来事が変われば───カカ様が俺を【こちら】にやらなくなる可能性は、否定できないな」
わざとらしい大きな溜息のあと、玻璃越しのひとえ瞼の眼が、セキを冷ややかに射貫く。
「例えどれほどささないな出来事であっても、その影響は計り知れない、というものなのですが。
貴方と瞳子様がこちらで出逢った……いえ、瞳子様が貴方を偶然見かけた……でも構いません。そのことによって、瞳子様が【以前はしたことを今度はしない】可能性が出てくる訳です。
貴方とどのように“陽ノ元”で出逢ったかは知りませんが、同じ時間と場所で出逢わなくなる可能性もあるのです」
「それは……」
反論するでなく、思わず口をはさみかけたセキを、一葉は容赦なくさえぎった。
「ええ。別に、違う出逢い方でも、貴方がたが惹かれ合う可能性はゼロ……皆無ではないでしょう。
ですが」
じっ……とセキを見つめ、一葉が冷笑を浮かべる。
「すると、その後の諸々の出来事も変わるはず。いま貴方は【ここに】居ますが……居なくなる可能性も、ある」
「……俺と瞳子の『気持ち』は変わらなくても、出来事が変われば───カカ様が俺を【こちら】にやらなくなる可能性は、否定できないな」