神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
「ビールは舌で味わうものじゃありませんよ。のどに流しこむものです」
「……なるほど」
確かに、テレビのCMも缶の煽り文句にも『ノドごしが美味い』となっていた。
それを思いだしつつビールを呷っていると、ふいに一葉が言った。
「私から、瞳子様に上手く伝えましょうか? 貴方がたが“陽ノ元”に戻るための条件」
「いや、それは俺が為すべきことで」
「好きな女抱きたいっていう当たり前のことを、下手な口実に差し替えられたみたいで、胸くそ悪いと思いませんか?」
その、あまりの言い草に、思わずセキが目を瞠ると、一葉はプッと噴きだしてみせた。
「やめてくださいよ、生娘じゃあるまいし」
「まさか、一葉殿の口からそんな下世話な物言いが出てくるとは思わなくてな……」
「赤狼様のなかで、私はどんな聖人君子なんですか」
しばらく笑いの余韻が残ったように肩を揺らしていた一葉が、ふうっ……と、息をつく。
「まぁ、どうしても瞳子様に言いづらいとなったら、頼ってください」
「……本当に、一葉殿には感謝しかないな。俺に何かできることがあれば、恩を返したいのだが」
「ああ、必要ありません。貴方の“役割”と同じ。白河の“役割”なんですよ、“神獣”サマのお世話は」
「……なるほど」
確かに、テレビのCMも缶の煽り文句にも『ノドごしが美味い』となっていた。
それを思いだしつつビールを呷っていると、ふいに一葉が言った。
「私から、瞳子様に上手く伝えましょうか? 貴方がたが“陽ノ元”に戻るための条件」
「いや、それは俺が為すべきことで」
「好きな女抱きたいっていう当たり前のことを、下手な口実に差し替えられたみたいで、胸くそ悪いと思いませんか?」
その、あまりの言い草に、思わずセキが目を瞠ると、一葉はプッと噴きだしてみせた。
「やめてくださいよ、生娘じゃあるまいし」
「まさか、一葉殿の口からそんな下世話な物言いが出てくるとは思わなくてな……」
「赤狼様のなかで、私はどんな聖人君子なんですか」
しばらく笑いの余韻が残ったように肩を揺らしていた一葉が、ふうっ……と、息をつく。
「まぁ、どうしても瞳子様に言いづらいとなったら、頼ってください」
「……本当に、一葉殿には感謝しかないな。俺に何かできることがあれば、恩を返したいのだが」
「ああ、必要ありません。貴方の“役割”と同じ。白河の“役割”なんですよ、“神獣”サマのお世話は」