神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
「そうだ、瞳子。ひとつ訂正しておきたいんだが」
「……何を?」
ナビに従い、しばらくは運転に集中していたのだが、街灯もまばらな山中に入り、瞳子はいったん車を停めた。
そのタイミングで、思い立ったようにセキが口をひらく。
「オレは、『マザコン』じゃないからな」
「は? ……って、ああ、あれね」
「かなり不本意だから、訂正させてくれ」
「……分かってるわよ、あの時は、ちょっと言ってみただけ」
道、間違えてないわよね、と、瞳子は電柱にある現在地を確認しながら笑う。
運転を再開しようとシフトレバーに置いた手に、セキが手を重ねてきた。
突然のことに驚いて見返せば、月と街灯に照らされた薄明かりのなか、まっすぐな眼差しが向けられていた。
「仮に、どちらかを選ばなければならない局面を迎えたら、迷うことなくオレは瞳子を選ぶ」
セキが告げる、残酷なほどに一途な想いが向けられた言葉の裏側。そこに彼の優しさがあることを、瞳子は知っている。
(私が、“陽ノ元”を選んだから?)
瞳子の孤独をセキはどこまで解っていて、この非情な決意を口にしたのだろうか?
この世界においても“陽ノ元”においても───寄る辺のない自分を『選ぶ』と告げる意味。
「……何を?」
ナビに従い、しばらくは運転に集中していたのだが、街灯もまばらな山中に入り、瞳子はいったん車を停めた。
そのタイミングで、思い立ったようにセキが口をひらく。
「オレは、『マザコン』じゃないからな」
「は? ……って、ああ、あれね」
「かなり不本意だから、訂正させてくれ」
「……分かってるわよ、あの時は、ちょっと言ってみただけ」
道、間違えてないわよね、と、瞳子は電柱にある現在地を確認しながら笑う。
運転を再開しようとシフトレバーに置いた手に、セキが手を重ねてきた。
突然のことに驚いて見返せば、月と街灯に照らされた薄明かりのなか、まっすぐな眼差しが向けられていた。
「仮に、どちらかを選ばなければならない局面を迎えたら、迷うことなくオレは瞳子を選ぶ」
セキが告げる、残酷なほどに一途な想いが向けられた言葉の裏側。そこに彼の優しさがあることを、瞳子は知っている。
(私が、“陽ノ元”を選んだから?)
瞳子の孤独をセキはどこまで解っていて、この非情な決意を口にしたのだろうか?
この世界においても“陽ノ元”においても───寄る辺のない自分を『選ぶ』と告げる意味。