神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
(だからこそ私も、“花嫁”としてセキに寄り添ってあげたいって、思えるんだ)

「───ありがとう、セキ」
「ん。……ま、そんな事態にならないよう、あらゆる手は尽くすけどな」

こつん、と。セキの額が瞳子の額に寄せられた。

「忘れないでくれ。オレの一番は、瞳子なんだってこと。他の、何を差し置いても、瞳子が大切なんだ」

額から伝わる体温が、優しい熱をもって瞳子に触れる。そのぬくもりが甘い痛みを伴って、瞳子の胸をしめつけた。

「私も。……アンタが一番大切。身体、本当に大丈夫よね……?」

思わず確認の意味でセキの胸の辺りに手を伸ばす。すると、ちょっと笑ってみせたセキが、伸ばした瞳子の手首をつかみ自らに引き寄せた。

「……そんなに心配なら、今晩、試してみるか」
「───は? って、えっ……!?」

耳もとで吐息まじりにささやかれ、ぎょっとなった瞳子に、くくっ……とセキが笑いだす。

「……冗談だ。一葉殿が待ちくたびれてるだろうから、そろそろ行くか。
あ、ちなみに瞳子。この道の折れた先が、もう白河家の私有地らしいぞ」
「なっ……! そういうことは早く言いなさいよ!」
「……悪い。瞳子に構って欲しくて、つい……」
「なにそれ、犬じゃあるまいし!」
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