神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
「大丈夫! セキが“神獣”に戻れたら、きっと犬貴さんよりカッコ良いはずだから!」
背伸びして赤茶色の癖っ毛をかき混ぜてやると、乱れた前髪の奥、こげ茶色の大きな瞳が獲物を射るように、輝く。
「……瞳子がそう言ってくれるなら、近いうちに戻れるかもな」
「うん、期待してる」
励ますようにセキに笑いかける、その最中。瞳子の耳に、聞き慣れたダミ声が入ってきた。
(あっ……あの子かも!)
辺りをぐるっと見回す。すると、アパート付近の一軒家の塀の上、のっそりと歩く灰色の野良猫がいた。
額から鼻筋にかけて大きな傷痕がある、ボサボサの毛並みのサバトラ。ピンと立った尻尾は長く、太い。片耳には地域猫の印、桜カットがなされている。
「あいつか、瞳子」
「そう。……グレーにゃん!」
呼びかけて、おどかさないよう近づこうとしたが、肝心の【グレーにゃん】は瞳子をチラ見して、塀の向こう側の隣家へと消え去った。
(相変わらず、つれない……)
「なるほど、片想いっぽいな」
「……ナニちょっと嬉しそうに笑ってんのよ」
「いや……悪い」
まったく悪いと思ってない様子のセキの腕を軽くはたいてやる。
その後、瞳子はセキを伴い自宅の片付けをおこなった。
瞳子は衣類と生モノの整理、セキは雑貨と書籍の分別を。
そうして、日の暮れる頃には十数個の大小のダンボールがアパートの一室に積み上がっていた。
背伸びして赤茶色の癖っ毛をかき混ぜてやると、乱れた前髪の奥、こげ茶色の大きな瞳が獲物を射るように、輝く。
「……瞳子がそう言ってくれるなら、近いうちに戻れるかもな」
「うん、期待してる」
励ますようにセキに笑いかける、その最中。瞳子の耳に、聞き慣れたダミ声が入ってきた。
(あっ……あの子かも!)
辺りをぐるっと見回す。すると、アパート付近の一軒家の塀の上、のっそりと歩く灰色の野良猫がいた。
額から鼻筋にかけて大きな傷痕がある、ボサボサの毛並みのサバトラ。ピンと立った尻尾は長く、太い。片耳には地域猫の印、桜カットがなされている。
「あいつか、瞳子」
「そう。……グレーにゃん!」
呼びかけて、おどかさないよう近づこうとしたが、肝心の【グレーにゃん】は瞳子をチラ見して、塀の向こう側の隣家へと消え去った。
(相変わらず、つれない……)
「なるほど、片想いっぽいな」
「……ナニちょっと嬉しそうに笑ってんのよ」
「いや……悪い」
まったく悪いと思ってない様子のセキの腕を軽くはたいてやる。
その後、瞳子はセキを伴い自宅の片付けをおこなった。
瞳子は衣類と生モノの整理、セキは雑貨と書籍の分別を。
そうして、日の暮れる頃には十数個の大小のダンボールがアパートの一室に積み上がっていた。