神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
つまり、この恥ずかしさを共有できるのは、同じ赤い“神獣”の“花嫁”のみということになる。

「……ぅ、ん……」

ようやく、お目覚めのようだ。
身じろぎをし、小さなうめき声をあげる彼の耳の側に、瞳子は唇を寄せる。

「おはよ。……双真(そうま)



最初こそ“陽ノ元”で出された『白米・汁物・魚』を中心とした和食がいいのかと用意したが、
「ああ、前にも言ったが瞳子が作ってくれるなら、なんでも食うぞ」
と言われてからは、洋食も中華も気にせず出すようにした。

(味音痴……とかじゃなくて、雑食だから?)

セキ───双真は、言葉通り、あり合わせで作ったチャーハンですら「美味い」と喜んでたので、あまり食の好みはないと見える。

「セキ、そこのお皿取ってもらっていい?」
「ああ」

スクランブルエッグとベーコンを皿に移し替える途中、はたと気づく。

「ごめん……つい」
「気にしなくていい。そもそもオレは『呼び名』が多いしな」
「そうだけど……」
「───それに」

言って、ちょっと笑った双真の片手が瞳子の頬に伸びてきた。親指が、下唇をやわく押す。

「この唇が『オレ』を呼ぶのなら、なんでも構わない。セキでもアンタでも……ばか、でもな」
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