神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
「もうっ、私の手がふさがってるのをいいことにっ」
「あとは、(しとね)の上でだけ特別に呼んでくれるってのも、いいな」
「……っ、絶対もう、呼んであげない!」

そんな風にむくれて応じつつも、瞳子自身、きっと彼の望むように呼びかけてしまうのだろうと思った。

(あー、もうっ。悔しいけど、惚れた弱みだ!)

真実(ほんとう)の名前を教えてあげたいと思っていたのは、紛れもない事実なのだから。



(たちばな)からなるべく急いで送らせるとは言われていたが、退職手続きの書類が届くまでに一週間はかかるとのこと。
その間に瞳子は、アパートの片付けや水道電気ガスなどの停止依頼も行っていた。

そして、今日───。

潮風をわずかに感じる、高台。そこに、こぢんまりとした寺───県内に(ゆかり)のある人物が起こした宗教の分派だ───があった。
住職にあいさつし菓子折りを手渡したのち、瞳子は双真を連れ、朱鷺子(ときこ)の墓前へと向かう。

盆に訪れたきりのそこは、所所に短い草が生えており、雨風の影響もあってやや墓石も汚れていた。
双真と手分けして草を抜き、墓所周りを清め、ようやく花と線香、それから朱鷺子の好物の和菓子を供えた。
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