神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
双真は、舌打ちした。結論からいえば、そうなる。それを考慮しなかったことが、双真たちの失態なのだ。

手早く“神逐(かむや)らいの(つるぎ)”を腰に吊るした双真を見上げ、イチが言った。

「カカ様の赦しは得て来ました。
瞳子サマはすでに貴方の正式な“花嫁”。身勝手な理由でさらうなど(もっ)ての外。必要であれば、貴方のもつ剣の行使も止む無し、とのこと」
「───ああ」

低い声で同意し、双真は黒髪の従者に命じた。

「瞳子を連れ戻す。白狼の屋敷へ」
「───仰せのままに」

片膝をついた小柄な青年が、うやうやしく主の側で(こうべ)を垂れる。

主従の姿が消え失せた屋敷には、雨音だけが鳴り響いていた───。



< 396 / 405 >

この作品をシェア

pagetop