神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
「さっきの、男は……」
「ああ。……()せた」
「え? なんで? どういうこと?」

命を奪われたり、同じ顔同士で争うことにならなかったのは良かったが。双真の言葉に、瞳子は困惑を隠せなかった。
そんな瞳子の頬を、困ったように笑った双真の両の手が、つつみこむ。

「いろいろと不審に思うのは解るが、ここは冷える。話をするならなおのこと、落ち着いた場所のほうがいいだろう」

言われて瞳子は、もっともだと思い、素直にうなずく。双真が、二度と離さないといわんばかりの力強さで、瞳子をかきいだいた……。



「瞳子さま!」「トーコしゃんッ」

屋敷に戻ると、“花子”の桔梗(ききょう)と小さな“眷属(けんぞく)”ふうに、抱きつかれた。

「お帰りなさいませ。ご無事で何よりです、瞳子サマ」

そこへイチがやって来て、生暖かい笑みを浮かべ出迎えたが、双真がぴしゃりと言い放った。

「なんだ、その言い方は。心がこもってないぞ。“結界”の補強は終わったのか?」
「ええ、もちろん。貴方が加減なく吹き飛ばしてくれたモノの代わりも見つけまして、今度はその辺りも含め、上手く修復できたかと」
「……ならば、いい」

ふてくされたように、突き放して応える双真。
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