神獣の花嫁〜あまつ神に背く〜
「……ん〜ッ?」
一本調子の高い声のままでいたイチの声が、急に裏返った。
「お〜、トーコじゃ〜ん!」
(……瞳子⁉)
うつむいてイチのちょっかいをやり過ごしていた虎太郎は、あわてて彼の手を押さえつけ、顔を上げる。
するとそこに、異様なものでも見るかのような目つきでこちらを窺う瞳子がいた。
「『ふろ』とやらは済んだのか?」
この屋敷に来る道すがら、
「砂だらけで気持ち悪い。お風呂に入りたい」
と訴えられたのだが、あいにく虎太郎たちの習慣にはないもので、瞳子の機嫌を損ねたのだが。
「湯浴みでございますね? 承知しております、こちらへどうぞ」
と、サホこと桔梗に連れられ瞳子は『湯殿』へと向かったのだった。
それから半刻。
戻ってきた瞳子の頬は上気し、濡れ髪をまとめ夜着をまとう姿は、なかなかに艶っぽい。
「んん? ってことは、おれお邪魔かぁ〜? コタ頑張れよ〜うッ」
パシッと虎太郎の肩を叩き、よろめきながら立ち上がるイチに手を貸そうとするも、
「おれのコトは放っとけ!」
と、はねつけ、千鳥足で自室の方へ向かって行ってしまった。
一本調子の高い声のままでいたイチの声が、急に裏返った。
「お〜、トーコじゃ〜ん!」
(……瞳子⁉)
うつむいてイチのちょっかいをやり過ごしていた虎太郎は、あわてて彼の手を押さえつけ、顔を上げる。
するとそこに、異様なものでも見るかのような目つきでこちらを窺う瞳子がいた。
「『ふろ』とやらは済んだのか?」
この屋敷に来る道すがら、
「砂だらけで気持ち悪い。お風呂に入りたい」
と訴えられたのだが、あいにく虎太郎たちの習慣にはないもので、瞳子の機嫌を損ねたのだが。
「湯浴みでございますね? 承知しております、こちらへどうぞ」
と、サホこと桔梗に連れられ瞳子は『湯殿』へと向かったのだった。
それから半刻。
戻ってきた瞳子の頬は上気し、濡れ髪をまとめ夜着をまとう姿は、なかなかに艶っぽい。
「んん? ってことは、おれお邪魔かぁ〜? コタ頑張れよ〜うッ」
パシッと虎太郎の肩を叩き、よろめきながら立ち上がるイチに手を貸そうとするも、
「おれのコトは放っとけ!」
と、はねつけ、千鳥足で自室の方へ向かって行ってしまった。