混沌
何回も否定されて、それが苦しかったから、悲しかったから、友達を嫌いになりそうだったから、やむを得なかったんだ。

「そうしたら、仕方がないだろう」

「仕方がない?」

「人間みんな感じ方が違うんだから、同じものをみていても、良いと思う奴がいれば悪いと思うやつもいる。それで当たり前だ。自分が好きなものを否定されたら、そういう感じ方をする人もいるんだって相手を受け入れた上で自分はそれが良く思える感性に生まれたことを感謝すればいい」

何それ。

そんな簡単な風に言わないでよ。

「だからさ、初めから好きなもの隠す必要なんてないだろう?」

この人はどこまでもまっすぐで、ほんと。

「……じゃあ、一つ言いますけど」

「何でも言ってみろ」

「あなたの瞳、星空を閉じ込めたみたいで綺麗ですね」

一瞬、青年のその達者な口が止まった。

私は鼻で笑った。

「正直な気持ちを述べてみました。どう、気持ち悪くないですか?」

今はっきりと分かった。

私はこの男が嫌いだ。

綺麗で眩しくてキラキラして近づくと自分の欲で咽せそうになる。

「……いや、」

青年はニヤッと笑った。

「君とは感性が合いそうだ」

「げ、」

私の嫌悪の声に彼の愉快そうな笑い声が重なった。

やっぱり私はこの男が苦手だ。

瞳の中で溺れそうになるから。
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