混沌
真希の言葉に、青年は首を捻って私を見た。

「違うのか?」

違わないけどもっ……。

「違います」

私は真希の手を取って足早に教室を立ち去った。



はぁ。

さようなら私の戦利品。

あのキーホルダーはこの間の株主総会で、お土産として菓子折り一式と一緒に中に入っていたものだった。

部屋のどこを探しても見つからなくて、おかしいとは思っていたが、まさか学校用カバンに混ざっているとは不覚。

しゃーない。

こういうこともある。

でも、……

ホームに到着した電車に乗ろうとした足がピタッと止まった。

あれは非売品だ。

もう手に入らないんだ。

そう思った次の瞬間には、私は大学を目指して走り出していた。
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