混沌
*
気がつくと私はあの青年とキャンパス内を歩いていた。
「あれ、真希は?」
少し前を歩く青年は、こちらを振り返り言った。
「お友達とはさっき別れただろう」
「お茶するはずだったんですけど」
「向こうは別に構わないって言っていたが」
「真希……」
「アオバでいいか?」
「え?」
「どこかに入って話そう」
*
私たちは学校近くのアオバコーヒーに立ち寄った。二人がけの席に向き合って座り、コーヒーを飲む。
いや、何これ。
戸惑う私をよそに、コーヒを飲む青年は優雅で様になった。
「あの、今日はどう言ったご用で」
「ん、」
私が話を切り出すと、青年は机にキーホルダーを出した。
「この間は悪かった。事情は人それぞれだよな」
「……いえ、私もその、失礼な態度をとってしまってすみませんでした」
私は目の前の青年の気分が変わる前にと、スッとキーホルダーに手を伸ばした。
「だが、好きなものは好きでいいと思うぞ」
青年はなんてことなさそうに言った。
私はギュッとキーホルダーを握りしめた。