混沌



気がつくと私はあの青年とキャンパス内を歩いていた。

「あれ、真希は?」

少し前を歩く青年は、こちらを振り返り言った。

「お友達とはさっき別れただろう」

「お茶するはずだったんですけど」

「向こうは別に構わないって言っていたが」

「真希……」

「アオバでいいか?」

「え?」

「どこかに入って話そう」



私たちは学校近くのアオバコーヒーに立ち寄った。二人がけの席に向き合って座り、コーヒーを飲む。

いや、何これ。

戸惑う私をよそに、コーヒを飲む青年は優雅で様になった。

「あの、今日はどう言ったご用で」

「ん、」

私が話を切り出すと、青年は机にキーホルダーを出した。

「この間は悪かった。事情は人それぞれだよな」

「……いえ、私もその、失礼な態度をとってしまってすみませんでした」


私は目の前の青年の気分が変わる前にと、スッとキーホルダーに手を伸ばした。

「だが、好きなものは好きでいいと思うぞ」

青年はなんてことなさそうに言った。

私はギュッとキーホルダーを握りしめた。
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