混沌
「みんながみんなあなたみたいに自分に自信が持てるわけじゃないんです」

「ふっ、」

「……何ですか」

「いや、俺はそんなに自信ありげに見えるのか? あの講義では、静かに教授の近くの席に座ってるだけなんだが」

「株主総会で白熱した議論してたじゃないですか……あ、」

青年はニヤニヤとして言った。

「やっぱりな。なんか見覚えがあると思っていた。これは、この間の株主総会のお土産品だよな」

気まずい。

これじゃあ、私が一方的に彼を知っていたことをバラすようなものじゃないか。

それは何だか私にとって、とても癪なことのように感じた。

「なぁ、俺だって別に自分に自信があるわけじゃない。ただ自分の気持ちに正直なだけだ」

「……正直になればなるだけ否定された時に辛いから、私は本音を隠す方がいいんです」

「そうか? 否定されたら、良さをプレゼンすればいいじゃないか」

「それでもわかってもらえないこともあります」

そう、私だってはじめから好きなものを隠していたわけじゃない。
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