冷徹魔王な御曹司は契約妻への燃え上がる愛を手加減しない【極上スパダリ兄弟シリーズ】
「藤井さん、おはよう」
 穏やかな笑顔で上杉さんが挨拶したので、慌てて乱れた前髪を直しながら挨拶を返す。
「おはようございます、上杉さん。副社長もおはようございます」
 上杉さんの横にいる副社長にも挨拶すると、物腰が柔らかく、落ち着いた声で「おはよう」と返された。
 百八十センチ以上はありそうな長身に、短髪で艶のあるダークブラウンの髪。
 見るからにオーダーメイドとわかる濃紺のスーツを着た彼は、綾小路悠。そう、私が数時間前にオペレーター業務で話した相手だ。
 ちなみにSカードのオペレーター業務はバイトで、私の本業は『AYN商事』の社員。AYN商事では専務秘書をしていて、秘書室の同僚ともうまくやっている。
 副社長は日本一の総合商社AYN商事の社長令息で、年は三十歳。額を出し、シルバーフレームのメガネをかけているその姿は、知的で大人な雰囲気を醸している。俳優顔負けの端整な顔立ちで、おまけに誰に対しても紳士的だから、うちの女性社員の一番人気だ。
 そんな彼はイギリスの名門大学卒業後、アメリカの有名証券会社で武者修行。今年の四月に日本に帰国し、うちの会社の副社長に就任した。
< 4 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop