腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~
「休日は、半日ほど寝ている場合が多いんです。だから事故の日も、夜遅くにコンビニへ……」
「栞ったら、コンビニは手軽だけど、高いから控えてって言ったのに」
「た、たまには贅沢をしたくて……」

 私は答えが合っていたのかどうか、チラッと姉の方を見る。前に「可哀想アピールも大事なの」だと聞いていたからだ。
 確か、庇護欲がどうのこうの、だったかな? そんな理由で。

 すると、姉は正解だったとばかりに、口元を両手で隠しオーバーリアクションを取ってみせた。

「っ! 私が不甲斐ないばかりに、ごめんね、栞」

 さらに抱きついて、耳元でこう囁いた。「上出来よ」と。

 あぁ、本当に嫌になる。姉もそうだが、こんな茶番に付き合う自分にも。

「それなら、ここにいる間は好きにするといいよ。といっても、怪我人だから色々と制限はあるけど」
「本当ですか、湊さん!」

 お姉ちゃん、それは私のセリフだと思うよ。けれどお構いなしに、湊さんに擦り寄る。

「母も、琴美のように栞さんを心配していてね。融通してやって欲しい、と頼まれたんだ。だから安心していいよ」
「さすが院長夫人! いいえ、湊さんのお母様だわ。直接、お礼を言いに行きたいんだけれど……栞もあんな状態だし……」
「わ、私もお礼を申し上げに行きたいです」

 これは本心だった。
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