腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~
第4話 一つ目の密約
姉の手を借りながら、折りたたみ車椅子に座る。
お尻の下は厚い布地があるだけで、とても頼りない。けれど今はそんな不満など口にはできる立場ではなかった。
何せ、その車椅子を押しているのが湊さんなのだ。いや、湊さんの前で姉に愚痴ることなんて、できるはずもないんだけど……。それでも。
「次期院長先生に押してもらっているなんて……」
いいのかな、と思わず心の声が口から漏れ出す。ここがエレベーターの中だったこともあり、私の小さな声は反響して、遠慮なく二人の耳へと届いてしまった。
けれど後ろにいる湊さんの声は穏やかだった。
「それをまぁ、何と言うか、未来の妻と義妹への配慮だと思ってもらいたいんだけどな」
「まぁ、湊さんったら」
嬉しそうな姉の声を聞いて、少しだけ安心した。園子夫人とも仲が良さそうだったから、そっちから攻めたのでは? と疑っていたのだ。
けれど湊さんとのやり取りを見るに……。
「気を遣えなかったから、琴美は栞さんに僕のことを紹介できなかったのだろう。婚約したというのに」
どうやら私の勘違いのようだった。
お尻の下は厚い布地があるだけで、とても頼りない。けれど今はそんな不満など口にはできる立場ではなかった。
何せ、その車椅子を押しているのが湊さんなのだ。いや、湊さんの前で姉に愚痴ることなんて、できるはずもないんだけど……。それでも。
「次期院長先生に押してもらっているなんて……」
いいのかな、と思わず心の声が口から漏れ出す。ここがエレベーターの中だったこともあり、私の小さな声は反響して、遠慮なく二人の耳へと届いてしまった。
けれど後ろにいる湊さんの声は穏やかだった。
「それをまぁ、何と言うか、未来の妻と義妹への配慮だと思ってもらいたいんだけどな」
「まぁ、湊さんったら」
嬉しそうな姉の声を聞いて、少しだけ安心した。園子夫人とも仲が良さそうだったから、そっちから攻めたのでは? と疑っていたのだ。
けれど湊さんとのやり取りを見るに……。
「気を遣えなかったから、琴美は栞さんに僕のことを紹介できなかったのだろう。婚約したというのに」
どうやら私の勘違いのようだった。