腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~
「だから俺が留守の間は、インターホンが鳴っても出るな。居留守を追及されたら、松葉杖を理由にすればいい」
「岡先生がいるから、ここでもリハビリをしているって言えばいいんですよね」

 早期退院ができたのは、それが理由だった。本当は私が病院にいると落ち着かない、という岡先生の事情だったけれど。

「……ここで先生はやめてくれ。もう病院じゃないんだ」
「あっ」

 もしかして、これも? 私を病院に置いておきたくなかった理由は。

「な、尚史(なおふみ)、さん?」
「呼び捨てでも、タメ口でもいいぞ。さっきも言ったが、病院じゃないんだ。誰も咎めない。むしろ恋人なんだから、(なお)でも(ふみ)でもいいぞ」
「っ! そ、そこはハードルが高いです!」
「何で? 初対面の時からズケズケ言ってきて、そんなところに惚れたのに」

 しょ、初対面で!?

「初耳です!」
「そうか? 考えてみればすぐに分かることだろう? 偽装恋人を持ちかけるにしても、誰だっていいわけじゃない。俺みたいな気難しい人間が相手ならな」
「……つまり、最初から私を?」
「気に入ったから誘った。条件が合ったのは言うまでもないが」

 だから遠慮がなかったんだ。最初からスキンシップが多いな、とは思ったけど。

 あ、あれは全部、そういうことだったのー!
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