腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~

第12話 襲来

 結局、呼び方は尚史さん。タメ口、というところで納得してもらった。それだけでも大変だったのに……園子夫人が余計なことを言うから、お風呂を筆頭に大騒ぎになった。

「濡れたタオルで体を拭く? それだけで仕事に行く気なのか?」
「松葉杖をついているんだから、多少は目を瞑ってくれるわ!」
「目じゃなくて鼻の間違いだろう?」

 今は揚げ足を取るところじゃない!

 それに大規模災害に備えて、今はありとあらゆる防災グッズがある。水なしで髪を洗うことだって可能なのだ。
 しかも通販で購入すれば、尚史さんに買ってきてもらう必要もない。現代の社会文明バンザイである。

 というのは冗談で。足にビニール袋をかけて、一人でお風呂に入った。

 けれど必要な物は日に日に増していく。一応、一時退院の時に必要な物は尚史さんのマンションに運んでいたが、姉と共用していた物もあった。
 それらを通販で頼み、尚史さんが帰りに宅配ボックスで回収。お陰で、本当に家から出なくても大丈夫になっていた。

 仕事復帰のためには、外出した方がいいんだけど、尚史さんからの許可が得られない。今も、尚史さんは私の担当医だったからだ。

「それ以外の理由もあるって分かっていても、ちょっとやり過ぎのような気もするんだよね」

 愚痴りながらも私は、今日も尚史さんの帰りを待った。
< 45 / 56 >

この作品をシェア

pagetop