誘惑しないで、羽瀬くん。


好き!付き合いたい!って感情より、憧れって気持ちの方が近いと思う。

推しのアイドルを見てるのと同じような感覚。


だから、“同じ高校に通うクラスメイト”という普通の距離感が私にはちょうどよかった。


仲良くなれたら嬉しいけど、遠くから見るだけでも十分だもん。


羽瀬くんのことを気にしつつ、自分の席へと向かう。

机の中を覗き込んで、置き去りになっていたプリントを手に取り安堵する。


家に着く前に気づいてよかった。

帰ったら課題やらなきゃいけないから、ちょっと憂鬱だけど……。


羽瀬くんと話せたし、プラマイゼロってことで納得しておこう。


うんうんと1人で頷いてからプリントを鞄に突っ込んだ。

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