誘惑しないで、羽瀬くん。


「……雨」


羽瀬くんの声が聞こえて思わず振り返る。

さっきまでスマホに夢中だった羽瀬くんの視線は、窓の外を向いていた。


雨って……。

羽瀬くんの言葉をなぞりながら外の様子を確認する。


「ほんとだ……」


さっきまで普通の曇り空だったのに、いつの間にかパラパラと雨が降っていた。


折りたたみ傘、ロッカーから出さないと。

羽瀬くんが雨のこと言わなかったら帰る途中に濡れちゃってたかも。


ありがとう、羽瀬くん!


心の中で感謝を述べてからロッカーに入れていた傘を取り出した。

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