誘惑しないで、羽瀬くん。
どうやら羽瀬くんは心を落ち着かせる暇さえ与えてくれないらしい。
なんか喋ってって、雑すぎるにもほどがある。
こっちは余裕ないんだから、そんな適当に振ってこないでよ……!
「えーっと、その……えっと、教室で何してたの?」
「秘密」
「そっかぁ、秘密か〜残念だな〜」
「………」
必死に絞り出した会話がたったの5秒で終わってしまった。
今の、私が悪いんでしょうか……?
「川名さんって会話下手だね」
無表情のまま羽瀬くんが言う。
いやいや!羽瀬くんのせいでしょ!
と、言いかけて口の中で飲み込んだ。
「ご、ごめんね。私と喋ってもつまんないかも……」
「そうじゃなくて、俺も話すの苦手だから同じだなってこと」