誘惑しないで、羽瀬くん。


……いやいや、絶対適当に言っただけだって。


特に理由がないことくらいわかってるのに、羽瀬くんが下手すぎるから勘違いしそうになる。

どうしよ。余計に落ち着けなくなっちゃった。


「顔赤いけど大丈夫?」

「そう、かな。気のせいじゃない!?」


変な子だと思われたくなくて必死に平常心を取り繕った。


───その直後。

羽瀬くん手が頬に触れた。


「熱いよ、ほら」


落ち着いた声色が私の脳内を駆け巡る。

せっかく普通でいようって思っていたのに、ビクッと肩が震えちゃって台無しだ。


私を見据える瞳があまりにも真っ直ぐでブレないから、全部……飲み込まれてしまいそう。

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