ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

「考え事をするな。俺に集中しろ」

 上の空でキスに応えているのを見透かされていた。まっすぐな視線に心を射貫かれ、胸が高鳴る。

 私たちがどんな関係だとしても……今は目の前の彼だけ見つめていたい。

「ごめん……統」

 初めて口にした、彼の下の名前。フルネームで呼んで悪態をついていた時とは違う、心地よい優越感が胸に広がる。

「やっぱりいいな、きみに名前を呼ばれるの」

 満足げに口角を上げた彼が、ご褒美だと言わんばかりにチュッと鼻の頭にキスを落とす。

 自分から呼んでみたものの、照れくささに頬が熱くなった。

「そ、そんなにいい……?」
「ああ。もっと呼んで」

 期待のこもった眼差しに見下ろされ、心臓が早鐘を打つ。

「お、統……」

 目を合わせたまま口にする勇気はなく、軽く顔を横に背けて言った。

 元々赤かったであろう頬に、さらに熱がのぼるのを感じる。

「……その顔、俺以外に見せるなよ」
「えっ?」
「かわいすぎるって言ったんだ」

 耳元で内緒話のように囁かれ、心臓が止まりそうになる。

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