ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

 彼はそのまま耳たぶや首筋に唇を這わせ、熱い吐息をこぼしながら、手のひらで私の体のラインをなぞり始める。

 服の上から触れられただけでもぞくぞくして、心臓が口から飛び出しそうだ。

「ん、待って……」
「待ってほしいならもっとそれらしく言ってくれ。そんなに物欲しそうな目をされると止まれなくなる」

 呼吸を荒らげた彼が、噛みつくようなキスで私の唇を塞ぐ。

 どうしよう……。このまま、流されてしまっていいの……?

 心に生まれる迷いとは裏腹に、体は甘い微熱に侵されていく。

 統の手がワンピースの裾から忍び込み、私の脚をゆっくりと撫で始める。拒もうとしても、統のくれるキスが気持ちよすぎて体に力が入らない。

 こんなにも甘く蕩かされてしまう経験は初めてだ。

 もしかして私、統のこと本当に――。

 彼にすべてを許しそうになっていたその時、ダイニングの方からスマホの着信音が聞こえた。統はぴたりと動きを止め、私も少し正気を取り戻す。

 聞き覚えのない音なので、たぶん彼のスマホだろう。

「電話、鳴ってるよ……」
「……ああ。聞こえてる」

 ほんの数秒、ぐっと何かをこらえるように目を閉じた統は、最後にふうっと息を吐き出してソファから下りる。

 未だに高鳴る心臓をなだめるように、私も体を起こした。

< 107 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop