ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「美吉ブロッサム、いい店ですよね」
「えっ……あ、ありがとうございます」
まさか褒められるとは思わず、しどろもどろになってしまう。
瀬戸山って実はいいヤツ? それとも、油断させるのが作戦?
「老舗の瀬戸山園さんには負けますけど、時間はかかってでもいつか肩を並べられたらなって……無謀ながら思っているんです」
負けないぞという意思表示……にしては若干弱いけれど、一応、私なりに宣戦布告をしたつもりだ。
瀬戸山がふっと笑ったのが聞こえたので、まさか嘲笑してる!?と思わず彼の方を向く。
そこには心底楽しげに目を輝かせた、瀬戸山の極上の笑顔があった。
彼のことなんて好きでもなんでもないのに、心臓が早鐘を打つ。顔がいい男は厄介だ。
「本当は、無謀だなんて思ってないんだろ」
「えっ?」
敬語を消した瀬戸山が、ジッと瞳を覗いてくる。どうしたらいいかわからなくて、彼を見つめ返すことしかできない。
「きみのがむしゃらな頑張りようはよく知ってるし、今日も何度か俺にライバル心たっぷりの視線を送ってきた。気づいてないと思ったか?」
嘘……バレていたなんて。
動揺して目が泳いでしまうものの、さすがに認めるわけにはいかない。