ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「でも、私……忙しいから自分の家に帰るので精いっぱいで、使わないかも……」
「別にそれでもかまわない。ただ、きみだけは俺の生活を乱しても構わないという意思表示がしたかった」
生活を乱す……確かに、恋人になったら多少はそうなるだろう。
でも、私はそれを避けたいからこんなにも迷っているのだ。前回の失敗を踏まえたうえで、自分にはもう恋愛は無理かもしれないと。
今はこんなにも私を大切にしてくれようとしている統だって、いつかは私にうんざりして、冷たくなって、突然別れようと言い出すかもしれない。
生活を乱されることを幸せに感じるのは、愛情がある時だけだ。
……統にそっぽを向かれるのが怖い。関係を始めなければ永遠に同じ方を向くライバルでいられるのなら、やっぱり私はそっちを選びたい。
浮かれかけていた心を戒め、私は鍵を彼に突き返した。
「……やっぱり、いいよ。私はもう、誰かの生活に干渉したくない」
「俺がそう望んでも?」
「そんなこと言ってくれるの、きっと最初だけだもの。長く付き合えば、嫌でも関係は変わっていく。私、統にはいつまでもよきライバルでいてほしいの。だから、これ以上あなたに深く関わりたくない。……さっきは無責任なことをしてごめんなさい」