ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
せっかく大きな仕事を持ち込んでくれた相手だが、言われっぱなしはどうも性に合わない。
彼女を不愉快にさせるのを覚悟で、私は小さく息を吸った。
「もしも私にそんな思惑があったとして、あなたに責める権利があるんですか? 瀬戸山社長とのご結婚には、九条百貨店と瀬戸山園との業務上の結びつきが関係していると伺っています。そういうのを、政略結婚と呼ぶのでは?」
蘭子さんの頬が、かぁっと赤く染まる。私だって好き好んで彼女に意地悪を言いたいわけではないが、先にこちらを侮辱したのは彼女の方だ。
少しくらい言い返される覚悟はできていたはずよね?
「あ、あなたと私では立場が違うわ。私と統さんの結婚は、両家の親も熱望しているの」
「だけど、肝心の瀬戸山社長はそれを望んでいない。違いますか?」
「……なんなのアンタ。何様のつもり?」
蘭子さんの唇が悔しさでぶるぶる震えている。私をアンタと呼び始めたことからも、彼女の怒りのボルテージが上がっていることがうかがえる。
統が彼女を子ども扱いしていたのは単に年齢が若いからというだけではないのだろうと、今になって理解した。