ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「私は関係のない第三者ですから、客観的事実を述べたまでです。先ほどあなたがおっしゃった子会社がどうのという話も、身に覚えがありません」
「と、とにかく……! あなたは私たちの結婚式のためにただ花を用意してくれればいいの。花屋ってそういうものでしょ? 主役になろうだなんておこがましいったらないわ。それが伝えたくて今回装花をお願いすることにしたんだから……ちゃんと用意してよね!」
私の返事を待たず、蘭子さんはスッと立ち上がって応接室の扉へ向かう。
去る前にキッと私を睨みつけ、乱暴に音を立ててドアを開閉した彼女を、やっぱり若いなぁと思った。
……そんな彼女に意地悪く反論した私も、大人げなかったけど。
ソファに深く背を預け、ふう、とため息をつく。
言いたいことを言ったとは思うけれど、胸がスッとするどころか後悔ばかり残っている。
本当は蘭子さんに嫉妬されるような立場じゃないのにあんなふうに彼女を責めて……本当に、何様だよって感じだ。
「……仕事しよ」
両手でぱん、と自分の太腿を叩いて立ち上がる。
彼らの政略結婚がどうなろうと、私がもうその物語に加わることはないんだから……考えるだけ時間の無駄だ。