ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「そ、その節は大変ご迷惑を……あの、そろそろいいですか? 俺、帰って仕事を探さないといけないので」
居たたまれなそうに、遼太くんが言う。さっきまで私の家に転がり込む気だったくせに、仕事探しだなんて調子がいいにもほどがある。
「待て。二度と苑香の前に姿を見せないと約束しろ」
遼太くんはそろりそろりとこの場を離れようとしていたが、統が鋭い口調で彼を引き留める。
ビクッと肩を揺らした遼太くんは、観念したようにこちらを向いて頭を下げた。
「すみませんでした。もう、ここには二度と来ません」
「本当だな? ……もしまた苑香に接近するようなことがあれば、どんな手を使ってもお前を社会的に抹殺する」
遼太くんの眼前まで歩み寄った統が、容赦のない言葉をかけて彼を冷ややかに見下ろす。
統と目が合った遼太くんはひゅっと息をのみ、無言でこくこく何度も頷いた。
そして、この場にいるのが耐えられなくなったかのように、早足で逃げていく。
ようやく気が済んだらしい統が、私のそばに戻ってきた。
「……大丈夫か?」
「う、うん。……ありがとう」
どうして彼がここに居合わせたのかわからない。だけど、助けてもらえたのは素直にありがたかった。
小声ではあるが、きちんと統の目を見てお礼を言う。