ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
 これって……恋? いやいや、断じて違う。危ないところを助けてもらったから、今はちょっと絆されているだけだ。

 自宅のキッチンで紅茶を淹れながら、騒がしい胸をなだめる。

 なんとか気を取り直すと、正面のカウンターに座る統にずっと不思議だったことを尋ねた。

「そういえば、どうしてうちのマンションそばにいたの……?」
「仕事が終わって、ちょうど苑香に連絡しようとしていたところだった。スマホを手に取ったら中路遼太のニュースが目に入ったんだ。芸能界からそっぽを向かれた彼が頼るのは、もしかしたら苑香かもしれないと思って心配になって……会社を出る前に一度美吉ブロッサム本社に電話をしてみた」

 どうして私に連絡しようとしたんだろう。

 本当はそこが気になったけれど、素直に聞けなくて別の質問をする。

「会社に?」
「ああ。個人的にかけたら出てもらえないかもしれないからな」

 統が自嘲するようにふっと笑う。私には一度拒絶されているから、彼なりに気を遣ったみたいだ。

「対応した受付の女性に、社長はもう帰ったと聞かされた。それで、家に向かうしかないなと思ったんだ。何事もなければそれでいいし、もしも本当に中路がきみの元を訪れていたとしたら、きみを守りたかった」
「そうだったんだ……」

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