ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
ストレートに『守りたかった』だなんて言われて困ってしまう。しかも、彼は本当に危機一髪のところで駆けつけ私を守ってくれた。
彼の好意にずっと応えられず、かわいげのない対応ばかりして、指輪も合鍵も返してしまうような女なのに……どうして今でもそんなに気にかけてくれるのだろう。
切ない感情で胸が詰まるような感覚がして、目を閉じる。
と、同時に、昼間目にした装花の見積書が、まぶたの裏にふと蘇った。
そうだ。彼と蘭子さんの結婚のこと……。祝福の花を用意する立場として、きちんと知っておきたい。
「統……蘭子さんと結婚するの?」
彼の前に紅茶のカップを置き、自分も隣に腰かけながら尋ねる。
気丈に振舞ったつもりだが、少し声が震えた。おずおず視線を上げて彼を見ると、統は怪訝そうに眉根を寄せている。
「どうしてそうなる? 彼女と結婚するつもりはないと、前に話したはずだ」
「だって、今日頼まれたのよ、蘭子さん本人に。あなたたちの結婚式のためにって、三百万円分の装花を」
「そんなはずはない。俺は――」
彼が強めに否定している最中、スマホの着信音が鳴る。
「またか……どうして苑香と大事な話をしている時に限って」
少し苛立ったようにポケットからスマホを出した統は、小さくため息をついてから応答する。