ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
統が蘭子さんとの結婚を決断してくれれば、私だって心から祝福の気持ちを持って、結婚式の装花を用意できるから……。
「……どういう意味だ?」
統が微かに眉根を寄せ、私の瞳をジッと覗いた。彼のまっすぐな視線に心が揺らぎそうになるけれど、勇気を出してその目を見つめ返す。
「あなたが私を気にかけてくれてるのって、たまたま誕生日に失恋して泣いてる私のそばにいたのが始まりでしょ? でも、その件からはもう立ち直ってるし、仕事が忙しくて後ろを向いている暇なんてない。同僚たちにも恵まれてるから、夫や恋人がいなくたって孤独を感じる必要もない。統が思うほど弱い女じゃないよ、私」
だから心配はいらないのだと伝えるように、ぴっと背筋を伸ばして胸を張る。
統はしばらく真剣な目をして私の言葉を吟味していたようだけれど、そのうちふうっと息をつき、苦笑を浮かべた。
「苑香は全然わかってない」
「えっ?」
わかってないって、なにを……?
意味がわからずただ瞬きを繰り返す。統はぐるりと部屋を見回した後、もう一度私を見た。