ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「この部屋に来るたび、俺がどれだけ理性を総動員してきみに襲いかからないよう自分を抑えていると思う? もっと強引に迫ってきみの全部を奪ってしまえたらと、何度も想像している。でも俺はそうしない。一番欲しいのは、苑香。きみの心だから」
ドキン、と激しく胸が高鳴った。ふたりきりでデートをした時でさえ、彼はここまで気持ちをさらけ出していなかった。
言わなくても伝わっていると思っていたのかもしれない。
私だって少しも察していなかったわけではないけれど……わざと気づいていないふりをしていた。
真正面から受け止めたら、自分の気持ちがどうなるのかわからなくて怖かった。
だから、鍵も、指輪も返したのだ。
これ以上彼のまっすぐな想いを知ってしまったら、私は――。
不安定に瞳を揺らし、おそるおそる彼を見る。
統はすでに覚悟を決めたように、凛とした表情で私を見ていた。
「単なる同情でそばにいるんだと思われたくない。俺は、きみのことが好きだ」
「統……」
なんと返事をしたらいいのだろう。ただ胸が痛くて、これまで抑えてきた感情があふれ出しそうになる。
だけどやっぱり、恋愛で傷つくのが怖いという思いも拭えない。