ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「きみのプライベートが知りたい。個人的興味で」
個人的興味って……もしかして、私、口説かれてる?
なんとなく彼の言わんとすることを察し、不覚にも頬が熱くなる。
なぜこの流れでそうなるのか混乱しながらも、丁重にお断りするためそっと彼の手をほどいた。
「すみません、お付き合いしている方がいるので……」
あまり瀬戸山の目を見ないようにして告げ、ぺこりと頭を下げる。
慌てていたせいか、藤棚の下から出たところで男性とぶつかってしまった。そのはずみで、男性が手にしていたグラスのお酒が私のスーツの胸元にかかった。
ぶつかった相手である白髪交じりの中年男性が、私の濡れた胸元をジッと見つめた。
「ああっ、こりゃ失礼。お姉さんの綺麗なお洋服が……」
酔っぱらっているせいもあるのだろうが、視線も口調もまとわりつくように粘っこい男性に、思わず鳥肌が立つ。
謝罪をするのに人の顔を見ず、胸ばかり見てくるのも気持ち悪い。
「こ、こちらからぶつかったので気になさらないでください。すぐに乾きます」
バッグからハンカチを取り出して濡れたブラウスにあて、男性の前を足早に離れる。