ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
いつか統の心が離れるのなら、最初から彼の手を取らない方がいいのではと思う自分もいる。
自分の殻にこもって、仕事だけして、いつでも味方でいてくれるカンナたちと夢を追い続けるだけでも、私は十分幸せなんじゃないかって……。
「返事は今じゃなくていい。九条のお嬢様とのことをちゃんと片付けて、苑香を迎えに行ける状況になったら、もう一度……きみに想いを伝えるから」
ポン、と私の頭に軽く手を置いた彼は、「そろそろ行くよ」と言って、扉の方へ向かう。
廊下に出た彼になんとなくついていき、玄関で靴を履く後ろ姿を見つめながら、私はぽつりと頼りない声を出した。
「でも、私……そんなに想ってもらう資格ない。中途半端なことをして、あなたを待たせてばかりいるのに……」
革靴を履いた彼が、こちらを振り返る。
スッと伸ばされた手が頬に添えられ、軽く顔を引き上げられると、彼の強い眼差しに射貫かれた。
「資格? そんなもの、苑香がありのままの苑香でいるというだけで十分だ」