ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~

「同じピンク色だっただろ」
「色だけじゃない。もう、そんなにお花に興味がなくて、瀬戸山園を継げるの?」
「……大丈夫だよ」

 俺は幼い時から瀬戸山園の後継者として育てられてきたが、重くのしかかる周囲からのプレッシャーには正直げんなりしていた。

 その上、花というものに興味が持てず、花屋という商売にも魅力を感じない。

 俺のような境遇でなくても進路について悩む高三という時期を迎え、本当に将来父の跡を継ぎ瀬戸山園の社長になるのかと、自問自答する日々だった。

 しかし、それを正直に母に伝えたら心配をかけてしまう。だからとっさに〝大丈夫〟と答えたのだった。

 春までは比較的病状が安定していた母だが、六月を過ぎ梅雨の時期を迎えると、つらそうな顔をしていることが増えた。

 俺が見舞いに行ってもあまりしゃべれず、静かにふたり、窓に当たる雨の音を聞く。

 花瓶には父の部下が届けたバラの花が飾ってあったが、自慢する元気もないようだった。

 この状態で、夏まで生きられるのだろうか。

 そう心配になってしまうくらい、衰弱しているように見えた。

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