ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
同年代に花を買いに来たと思われるのが気恥ずかしくて、俺は少し狼狽えた。
「いや……別に」
ついそっけない反応をしてしまうが、彼女は気にせずに紫陽花の花を見下ろして微笑んだ。
「紫陽花って、透明なガラスの花瓶に生けるととっても綺麗なんですよ。色が違うものを組み合わせてもいいし、一輪挿しでも素敵です」
買うとは言っていないのに、丁寧に説明してくれる。その口ぶりから、彼女が花を心から愛していることが伝わってくる。――瀬戸山園を継がなくてはならない俺よりもずっと。
「……でも、病人の見舞いには向かないだろ?」
黙っていればよかったのに、気が付いたら俺はそう口にしていた。
彼女は少し考えて、俺に尋ねる。
「お見舞いする方、紫陽花がお好きなんですか?」
「ああ。……だけど、他の花屋で買おうとしたら止められた。見舞いの花には向かないと」
きっと花屋にとっては常識的な知識なのだろう。俺は不勉強で知らなかったけれど、積極的に店を手伝っている花好きな彼女にもきっと当たり前の話。
瀬戸山園のショップで言われたように反対されるに違いないと、思わず目を伏せていたその時だ。