ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
「できます! 今すぐに!」
彼女はレジ台の横にあるラッピング用のスペースで、すぐに作業を開始した。
長さを揃えた茎をしっかりと紐で固定し、先端の処理。俺がこれから雨の中病院に行くことに配慮して、防水のラッピングペーパーを選んでくれた。
ふんわりとしたオレンジ色のラッピングペーパーの上にセロファンを重ね、中央に綺麗なギャザーを作ると、最後に爽やかな黄緑のリボンを飾る。
「こちらでいかがでしょうか……?」
完成した花束を俺に見せる彼女はとても緊張しているようだったが、文句のつけ所などひとつもなく、俺は思わず笑顔になった。
「すごく綺麗だ。ありがとう」
今日、この店に花を買いに来てよかった。これなら母も喜ぶだろう。
ブーケバッグに入れてもらった花束を見下ろすと、つい口元がほころぶ。
店のガラス戸から外を覗くとまだ雨が降り続いていたが、気持ちは晴れやかだった。
店を出る時には彼女がショップカードをくれて、本人の個人情報が書いてあるわけでもないのに、繋がりができたようでうれしかった。
またここへ花を買いに来ようと心に決め、傘を差して外に出る。
もちろんすぐに母のいる病院へ向かった。