ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
彼女が着ていた制服は俺の高校のものじゃなかったし、彼女が俺によくしてくれたのは、単に花屋の客だからだ。
一度会話したくらいで告白されるつもりでいる自分の身勝手さに呆れてしまう。
でも……。
「……もしかしたら、そうかもな」
母とこうして話せる時間も残り少ないのだと思うと、嘘はつきたくなかった。
恋愛感情をハッキリと自覚していたわけではない。しかし、瀬戸山園を継ぐかどうかの迷いが晴れたのは、おそらく彼女との出会いがきっかけだ。
「ホント? やだもう、なんだかお母さんの方が照れちゃう。どんな子なの?」
「そんなに興奮しないでくれ。体に障ったら大変だろ」
「大丈夫よ。統が花束を持ってきてくれたおかげで、今日はとても気分がいいの」
本当かよ……。
半信半疑だったが、確かに俺が来てから母の顔色はずっとよかった。少し言葉を交わすだけで疲れてしまう日もあるのに、今日は話もスラスラとできる。
「どんな子……と言われても、名前も知らないんだけど」
「うん」
「花屋の孫だからか花が好きで、一生懸命で……笑顔が明るいんだ。向日葵みたいに」