ライバル企業の御曹司が夫に立候補してきます~全力拒否するはずが、一途な溺愛に陥落しました~
柄にもないことを言っている自覚はあったが、本音だった。
彼女の笑顔は美吉ブロッサムの店内にあったどの花より、明るく輝いて見えた。
「そうなんだ。じゃあ、統はその子にとっての太陽にならなきゃね」
「えっ?」
「向日葵は太陽のことがだーい好きで、ずっとそっちばかり見ているんだから」
母は茶目っ気たっぷりにそう言って、にっこり笑う。
知り合ったばかりの女の子とそんな関係になれる自信はまったくなかったが、母がうれしそうなので乗っかることにする。
「どうアプローチしたらいいと思う?」
「そうね……一生懸命な子は知らず知らずのうちに無理しちゃうから、優しく包み込んであげるような愛情表現がいいかも」
「できるかな、高校生の分際でそんな」
「なに言ってるの。むしろ、ありのままの統がそうじゃない。優しくて、家族思いで。……お母さん、天国に行っても絶対に自慢しちゃう」
明るい口調だったが、最後は声が震えていた。
近いうちに家族と別れなければならない寂しさがふいにこみ上げてきた、そんな感じだった。